中小企業の「手がまわらない問題」について考える

会社員として企業人事の仕事をしていた時、経営資源(ヒト・モノ・カネ)について、深く考える出来事がありました。

その時、特に経営資源に関心を持っていたわけではないのですが、面白いことに5日間連続、しかも合計7名の方から経営資源のお話を聞いたのです。

(あとから知ったのですが、ちょうどその前の週に経営者向けの「経営資源活用セミナー」が開催されていたようです。なので、その影響なのかもしれません。)

皆さんからお聞きした話の内容はバラバラなのですが、一貫していたのは「ヒト」が重要で大切であるということでした。

私自身も人材育成を専門としていて「社員の成長は企業の成長に繋がる」「企業の成長は社員の成長に繋がる」と考えているため、お話を聞いて共感しかありませんでした。

ただ、不思議と「共感して終わり」とはできませんでした。

こんなに5日間も連続して同じテーマの話を聞いたということは、きっと私にとって何か意味のあることなんだろうと勝手に感じ、その後半年くらいかけて地方企業経営者の方100名に、こんな質問をしてみることにしたのです。

「企業を成長させるうえで、大切にしている経営資源は何ですか?」

おそらく「ヒト」と答える方がほとんどだろうと思いながらも質問したところ、やはり「ヒト」と答えた方が97名。ほとんど迷いなくです。

「情報・時間」といった資源を加えても「ヒト」が大切であるという回答でした。

また、97名中「ヒト」に関する課題を抱えている方は89名。

「ヒト」が大切だと認識しながらも、「ヒト」に関する課題を抱えている企業が9割以上であるという結果でした。

ただ、私が注目したのはその結果そのものではなく、「ヒト」に関する課題に取り組むことが後まわしになっている傾向が強いということでした。

人事課題が後まわしになっている理由

「ヒト」に関する課題は、人事課題であり、人材採用や定着化、教育、評価制度、給与制度、メンタルヘルスなど多岐に渡ります。

一口に人事課題と言っても企業ごとにその内容は異なるものですが、人事課題を後まわしにしてしまう理由として、どの企業も理由にあげていたことが「手がまわらない」ということでした。

もちろん、企業によって状況は千差万別で「手がまわらない」状況もそれぞれですが、口々に「手がまわらないんだよね」「人手が足りなくて」「売上作るのに精いっぱいで」という話が多かったです。

地方の中小企業やベンチャー企業は専任の人事担当者がいなかったり、いたとしても「ひとり人事」であるケースが多いので、「手がまわらない」状況は多発しやすい傾向があります。

経営者や人事担当者が人事課題を明確に認識できていても自分で取り組むゆとりがない。

経営者が社員に指示をしても動ける社員はないし、人事担当者が上司に相談しても上司も手がまわらないし、他にやれる人もいない。

そんな状態を繰り返していくうちに課題はどんどん大きくなり、いつしか課題が問題になり、マイナスな状態を引き起こす負のループに突入するという話も共通していました。

私も「ひとり人事」を経験しているので、このような状況はリアルに実感することができます。

会社が急成長していく中で、やらなければいけないことが目の前に山積みになり、山を崩しても次の山がいつの間にかできている、そんな繰り返しの中、「手が足りない」と思うことばかりだったからです。

▲私が「ひとり人事」で感じたイメージは、こんな雪の山脈に近いかもしれません。雪山だから普通の山より登るもの下るのも一苦労だけど、登山の途中で助けてくれる人に出会ったり、休憩スポットで一息入れながら、まさに山脈登山をしている感覚に近かった気がします。

安易な採用は傷口に塩を塗るだけ

「手がまわらない」ことを解決する手段として、採用活動に力を入れるケースが多いですが、私は、採用よりも先にやるべきことがあると考えています。

トータル10年以上、社員やスタッフ採用に関わっていますが、やみくもに人を採用してもうまくいくことはほとんどありません。

「採用した後、どんな仕事をやってほしいのか」

まずは、ここからスタートです。

「こんな仕事をやってほしいのか」ということを明確に考える場合、現状のタスクやオペレーションを洗い出し、誰が何をどれくらいの工数でやっているかを見える化し、現状のすべてをそのまま維持する必要があるのか見直していく必要があります。

この検証を進める中で、実は必要がなかったり、想定よりも工数がかかっているタスクやオペレーションがみつかるかもしれません。

実は他のチームとタスクがかぶっていて不効率なことがみつかるかもしれません。

もしかすると誰かがやっていたと思っていたタスクが完全に漏れていたことが見つかるかもしれません。

とにかく現状把握を徹底して行います。

そのうえで、改めてタスクやオペレーションを見直し、新しく採用する人のことではなく、今いるメンバーの役割分担をするのが先決です。

誰が何をやるのか役割分担をして、そのうえで足りない部分をお願いできる人を採用すると考えて初めて「どんな仕事をやってほしいのか」が明確になります。

「とにかく誰でもいいから来てほしい」と採用した方は、役割が不明瞭なので目先の忙しさが解消されると手持ち無沙汰になってしまう傾向が強いです。

そして、手持ち無沙汰を解消するために、無理やり必要もない仕事を作り出してお願いするという本末転倒なことが起きてきます。

この必要もない仕事は、やがてあたりまえにやる仕事になっていく…そんな悪循環が繰り返されます。

「手がまわらない」「人が足りない」=「採用」という発想が出てきた時は、一度立ち止まって「本当に採用する必要があるか」をじっくり検討することを私はおススメしています。

安易な採用は、傷口に塩を塗るようなもの。

私は実体験からもそんな風に感じています。

▲調味料としての塩は大好きですが、痛い塩はできる限り遠慮したい…。現場を優先して視野いやすい人事担当者は、「本当に採用必要ですか?」と言える勇気が必要です。

重要なのは「手がまわらない」状況の検証

人事課題があるけれども、「手がまわらない」から取り組めない。

安易な採用を解決手段にすることはおススメしていませんが、人事課題を後まわしにすればするほど、組織にほころびが出てきます。

退職者の増加、帰属意識の希薄化、メンタル不調者の増加…。

そして、社員が不安定になってくると、サービス品質の低下、顧客満足度の低下、売上の低下にもつながっていき、結果的に企業の存続が危ぶまれる状態まで課題が大きくなっていきます。

逆に人事課題を早急に解決し、安定した制度や体制が整っていけば、企業の成長にもつながりますし、そもそも人事課題が発生しづらい企業文化をつくっていけます。

だからこそ、「手がまわらない」からと後まわしになりがちな人事課題にこそ、後まわしせずにじっくり取り組んでいきませんか?

まずは御社の現状把握をして、本当に「手がまわらない」のかを検証していきましょう。

もしかすると「手がまわらない」状態は錯覚で、実は「手がまわる」状態かもしれませんよ。

ただ、なかなか検証する時間も取れないという場合も多いと思います。

そんな時は、ぜひ当事務所にご相談ください!

御社のニーズに合わせた関わり方で、人事アシスタントとしての実務対応はもちろん、コンサルティング契約、アドバイザー契約なども可能です。

「手がまわらないから採用しよう!」とやみくもに採用計画を立てるのではなく、まずは、業務オペレーションや役割分担の見直し・再構築を進めるところからスタートしましょう。

そして、本当に人手が足りないという時は、採用活動もしっかりとサポートいたします。

ぜひお気軽にお問い合わせください。